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福岡高等裁判所 昭和53年(ツ)35号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一原判決は、上告人ら及び被上告人ら先代内田栄一の営業ないし生活の状況、賃貸借契約締結当時の事情を綜合して考えるといまだ上告人福田正八には被上告人ら先代内田栄一に対し本件家屋の明渡を求める正当の事由はないというべきであると判示し、上告人らの本訴請求を排斥している。

二しかしながら、原審の確定する事実関係のもとにおいては、以下に説示するとおり、上告人福田正八の本件賃貸借契約解約の申立人に正当の事由は存しないとする原審の判断は、ただちに首肯することができない。

三すなわち、原審が右判断の前提として確定した事実関係は、おおよそ次のとおりである。

1 上告人福田正八は、昭和三八年三月一一日、被上告人ら先代内田栄一に対し別紙目録(原判決添付)(一)記載の家屋を賃貸借期間同日より昭和四〇年三月一〇日まで、賃料一か月五万円、毎月五日に支払うとの約で賃貸し、のち右期間は更新され、賃料は昭和四〇年七月分から月額五万四〇〇〇円に改訂された。

右家屋は、もと上告人らが貸衣裳及び衣料品販売業を営んでいたが、営業の中心となつていた店員が退職することになり、これをきいた被上告人ら先代内田栄一が賃借を申込み、前記賃貸借契約をするはこびとなつたもので、内田栄一は右借受後本件建物の二階に住み、階下で質流れ品等の販売業を営んでいたが、昭和五二年六月二一日死亡した。

その間に、内田栄一は昭和四七年頃上通りの通りに面して土地四〇坪を買受け所有している。

2 一方上告人らは、白川左岸に所在する別紙目録(原判決添付)(二)記載の家屋に居住し、同族会社である合資会社福田商店を組織して同所で貸衣裳及び衣料品販売業を営んできたが、昭和二九年頃から白川改修計画案があることが報道されはじめ、昭和三七年六月には四、五年のうちに白川左岸に堤防がつくられる見通しであることが報道された。右工事には白川左岸の住民による反対運動があつたが、いずれ着工され上告人ら居住の右家屋は撤去されることが予想されていた。そこで上告人福田正八は、昭和四一年九月二一日内田栄一に対し自ら使用する必要があることを理由に本件賃貸借契約の解約申入をし、さらに昭和四七年九月四日本件訴状の送達により同じく解約の申入をしたが、解決をみないうち(二)の家屋は右白川左岸改修工事のため昭和五〇年八月撤去された。

そこで上告人らは、現在合資会社福田商店として上通りの店舗を賃料月額二五万円で賃借して呉服販売業を営み、また同族会社である有限会社福田屋として交通センター内の店舗を賃料等月額二五万円で借受け貸衣裳業等を営んでいる。

四思うに、期間の定めのない賃貸借において賃貸人に自己使用の必要があるという場合にも、その必要の強弱度は賃借人の必要度との相対的関係において考察されなければならず、その利益を比較する場合には、賃貸借契約成立後の当事者双方の生活関係の変化をつぶさに検討しなければならない。

この点、原判決が上告人らの営業の主体であつた(二)建物が公共事業のため撤去され、上告人らが他に借家をして営業をしていることを認定し、一方内田栄一か上通りに面した土地四〇坪を所有するようになつたこと及び同人が控訴審継続中に死亡したことを認定しながら、賃借権の承継とこれに伴う生活関係の変化について考慮せず、また右土地への移転の可能性についてなんらの説明を加えることなく、ただ単に「右土地が中心部よりはなれたところであつて同所に店を出すことは現在被控訴人(被上告人ら)側は考慮していないことが認められる。」として上告人福田正八の解約申入に正当の事由を認めなかつたのは、借家法第一条ノ二の解釈適用を誤りひいて審理不尽、理由不備の違法を犯したものというべきであり、この違法は原判決の結論に影響することが明らかであるから、論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。

(佐藤秀 篠原曜彦 大城光代)

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